DESIGN EXTREME SEMINAR in Inter BEE REPORT

映像業界のクリエイターに向けた「DEXS in Inter BEE」が、Inter BEE (国際放送機器展) 内で 11月13日に開催されました。
3つのセッションに分かれ、映像業界のトップクリエイターが登壇したセミナーの詳細レポートをお楽しみください。

ハリウッドからクリーチャー・ディベロッパーの山口圭二氏が来日講演!
ギレルモ・デル・トロ監督による映画「パシフィック・リム」の
ビハインド・ザ・シーンを解説

山口圭二 氏

講師:山口圭二 氏

クリーチャー・ディベロッパー / ILM

2001年、クリーチャー・ディベロッパーとして ILM (インダストリアル・ライト & マジック) 社に参加。東京造形大学で油絵や絵画などの美術を学び、美術学士号を取得。リンクスコーポレーション社の CG スーパーバイザーとして活躍した後に渡米。
デジタルドメイン社のメンバーとして、「タイタニック」「X-MEN」など数々の大作映画でアニメーション・スーパーバイザーやデジタル・アーティストを務める。ILM では「アベンジャーズ」「パシフィック・リム」などの大作に携わる。

 

日本の特撮やアニメを参考に

最後に登壇したのは、ジョージ・ルーカスが設立したインダストリアル・ライト & マジック (ILM) に所属し、「トランスフォーマー」や「アイアンマン」、「アベンジャーズ」など 10 年以上ハリウッド映画の VFX に携わるクリーチャー・ディベロッパーの山口圭二氏。
ILM の近作を網羅したショーリールを上映後、映画「パシフィック・リム」の VFX のビハインド・ザ・シーンについてたっぷりと紹介してくれた。

『パシフィック・リム』
2013年12月11日発売 【初回限定生産】ブルーレイ & DVD セット 税込 3,980 円 ワーナー・ホーム・ビデオ
© 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.

ギレルモ・デル・トロ監督が日本カルチャーからの影響を公言して憚らない「パシフィック・リム」だが、山口氏も本作の造形にあたって「ウルトラマン」、「ゴジラ」、「エヴァンゲリオン」、「鉄人 28 号」など日本の特撮やアニメを参考にしている。

そして、「パシフィック・リム」の制作で大きな挑戦となったことの 1 つは、予算が 30% 削減されたため、従来 ILM が使っているレンダリングソフトの RenderMan ではなく、Arnold Renderer を使用しなければいけなかったこと。25 年以上掛けて開発してきた RenderMan のシェーダーを捨て、1 から Arnold Renderer のシェーダーを開発することになったため、新しいチャレンジばかりとなった。
シェーダー開発に 1 年しかかけれらず、制作序盤は苦心が続き、終盤になって制作した海での格闘シーンやビルの崩壊シーンは満足したできになったそうだ。また、Arnold Renderer を使用した時に不利な点は、モーションブラーが綺麗に出ないこと。それを解決すべく、2D でモーションブラーを作ることにしたため、3D のエフェクトと合うように工夫を凝らして 3D 対応のマスクを算出した後、2D のモーションブラーをつけるという手法を取っている。

 

大きな要素は、エモーショナルな描写

ハリウッドでの VFX 作業は分業化されており、それぞれのアーティストが担当する。
山口氏が担当したのは、怪獣のリギング。怪獣のテクスチャーを作るためにゾウやワニ、トカゲなどの皮膚を参考にしたり、魚の骨格も研究するなど、説得力のある存在を生み出すための苦労も知ることができた。
また、裏話として、登場する異形の怪獣たちのデザインやネーミングについてのエピソードを披露。サンフランシスコを襲撃するから "サンフランシスコ" という仮の名前がついていたアックスヘッド、同じ理由で "シドニー" だったブレードヘッド、「日本の大太刀に由来するのではないか」というオオタチ、山口氏が「ガメラ 対 大悪獣ギロン」のギロンが元ネタだと直感したナイフヘッドなど、生でしか聞けない話が満載だった。

© 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.

その後も、数々の「パシフィック・リム」のメイキングが解説されていった。
特筆すべきは "水" の表現。タイトルに "パシフィック" とあるように、水の表現はこの映画の肝でもある。イェーガーのジプシー・デンジャーが夜の海を歩くシーンでは、荒れた海や波の飛沫、空中に舞う霧、雷やライトなどの光、ジプシー・デンジャーの動きに合わせて変化する水のパーティクル、水面の泡立ちなどをレイヤー毎に細かく作り込んでいく過程をそれぞれ解説してくれた。
水の表現については、2003 年の「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」の頃から自社開発で取り組んでいる、ILM が得意とする分野で、波や水面の形状をコントロールするシステムなどを有効に使っているそうだ。

© 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary. All rights reserved.

最後に山口氏は、最新のテクノロジーで可能になった VFX の可能性についてコメントした。
映画「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン監督の言葉「この映画の CG は Special Effects ではなく、Special Narrative。ストーリーを語るための映画の表現であり、宇宙のシーンの CG であっても、有機的にしたい」、そして、ILM のデニス・ミューレン氏の「特撮においては、感情を如何に表現するかが大切だ」という言葉に強く共感するところがあるという山口氏。今後 CG が担うであろう一つの大きな要素は、エモーショナルな描写であることを語ってくれた。

VFX の本場ハリウッドの第一線で活躍する山口氏の貴重なセミナーは、多数の立ち見が出るほどの盛況となった。次作に、シリーズ最新作となる「トランスフォーマー4」が予定されているとのことなので、来年夏の日本公開を楽しみに待とう。

 

インテルの CPU や SSD をはじめ、テクノロジーの進化に支えられ、日々新しい表現を生み出し、追い求めるクリエイターたちの貴重なトークセッションを聞くことができた今回の「DEXS in Inter BEE」。今年の Inter BEE でも大きくフィーチャーされた "4K の時代" が訪れつつある。テクノロジーの発展にインスパイアされ進化してきた映像表現、今後も期待と共に注目したい。

取材:white-screen.jp

 

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