DESIGN EXTREME SEMINAR in Inter BEE REPORT

映像業界のクリエイターに向けた「DEXS in Inter BEE」が、Inter BEE (国際放送機器展) 内で 11月13日に開催されました。
3つのセッションに分かれ、映像業界のトップクリエイターが登壇したセミナーの詳細レポートをお楽しみください。

連続 TV ドラマ「Woman」はこうして作られた!
演出家・水田伸生氏と VFX スーパーバイザー・オダイッセイ氏が紐解く、
TV ドラマの未来形

水田伸生 氏

講師:水田伸生 氏

演出家 / 日本テレビ放送網株式会社 制作局 専門局次長

1958年 8月20日生まれ、広島県出身。1981年、日本テレビ入社後、テレビドラマの制作に携わる。「甘い生活。」(99年)、「Woman」(13年) など話題作の演出を数多く手掛ける。
映画監督としては「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」(06年)、 「舞妓 Haaaan!!!」(07年)、「なくもんか」(09年) を手掛ける。最新作は宮藤官九郎脚本の「謝罪の王様」(13年)。2005年、向田邦子原作「冬の運動会」(NTV) で放送文化基金賞を受賞。

オダイッセイ 氏

講師:オダイッセイ 氏

VFX スーパーバイザー / 株式会社ナイス・デー 常務取締役

1965年生まれ、長崎県出身。大学在学中よりフリーのディレクターとして活動。卒業後、CG、特殊造型など VFX 全般への豊富な知識を活かし、ゲームや CM のディレクター、映画 / TV の VFX スーパーバイザーから演出まで務める。
代表作は「252 生存者あり」(08年)、「黄金を抱いて翔べ」(12年) など。2006年「笑う大天使 (ミカエル)」にて映画監督デビュー。監督 2作目「カンフーくん」(08年) は、第 5 回インドネシア国際児童映画祭で唯一の賞である観客賞を受賞。

 

目指しているのは、映像と視聴者の心がカットバックされること

続いてのセッションは、2013年 7月~9月に日本テレビで放映された連続 TV ドラマ「Woman」の演出家、水田伸生氏と、VFX スーパーバイザーのオダイッセイ氏が登場。
人間の真に迫るシリアスなストーリーと、主演の満島ひかりをはじめとした俳優陣の壮絶な演技、そして丁寧な画作りが一際印象的な TV ドラマとして話題を呼んだ「Woman」の舞台裏について明かしてくれました。

「Woman 第一話」 ©日本テレビ

毎年 1 本のペースで映画を撮っており、2010 年の TV ドラマ「Mother」 が約 4 年ぶりの TV ドラマ作品となったという水田氏。
「Mother」と同じ脚本家の坂元裕二氏とタッグを組み、"格差社会"、"貧困"、"シングルマザー" を題材として取り上げ、映画で培った経験を存分に盛り込んで挑んだドラマだったという。例えば、TV ドラマではよく用いられる、パンフォーカスで全てにフォーカスを合わせるカメラ・レンズではなく、単玉のシネレンズを使用し、人の目と同じように意識を持った映像を作り上げている。
「Woman」においては、TV ドラマの予定調和的な映像を排除する事が狙いの 1 つであったため、徹底的にリアルな映像を追及している。

水田氏「TV というのは視聴者がチャンネルをザッピングするメディアなので、映像のルックが非常に大事です。目指しているのは、映像と視聴者の心がカットバックされること。生意気ですね (笑)。
制作を始めるにあたり、100 人を超えるスタッフにイメージを共有してもらうために、参考作品を用意します。今回は、フランス映画「君と歩く世界」。原題は「De rouille et d'os」で直訳すると "錆と骨"、錆びは血の味ですね、骨太な内容なんです。映像も画が美しいだけじゃなく、25mm から 40mm の短いレンズで被写体との距離感を縮めた演出や、手持ち撮影、低いところからライトを使ったりしています。それらは、テーマを表現する上で、とても効果的な映像だったのです」

画作りへのこだわりは、ライティングやセットにもおよんでいる。照明は壁や畳に一度反射させて使ったり、生活感のある自然なライティングを意識している。セットにおいては、通常ならばスタジオスペースを局で共有するため、建てては壊しを繰り返すところを、特別に撮影期間の 4ヶ月間建てたままにし、リアルな生活空間を作った。壁紙ではなく、左官屋が壁を塗ったりと、実際に人が暮らしている家と同じように、ディテールまでこだわり抜かれている。

 

映像は光で描くもの

「Woman」 ©日本テレビ

そして、一見するとどこに使われているのか分からない CG だが、そのインビジブルな CG こそが「Woman」におけるオダ氏の功績だ。
例えば、青柳信 (小栗旬) が地元に帰って夕日を眺めるシーンでは、都内で別撮りした夕日を合成して作り上げている。髪の毛一本から手作業でマスクを切り、薄く雲を足して奥行きを持たせるなど、実写映像の空気を決して壊さず、リアリティのある美しい映像を作り上げている。

オダ氏「スタッフにはひたすら『光を見てくれ』と伝えます。台本も読ませて、若手スタッフは現場にも連れて行く。芝居を見て、俳優の視線を見て、光を描くんです。映像は光で描くもの。そして、シンプルなことを丁寧にやるのが大切なんです。
現場の空気というのは、現場にいないと分からない。それを踏まえて、マシン環境にどうやって持ち込むかが、クリエイターとしてのセンスになるんだと思っています。それを養う上でも、まずは撮影現場を見ないといいものが生まれない、それだけは常々意識しています」

水田氏とオダ氏は 10 年来共に仕事をし、「Mother」や「Woman」といった TV ドラマだけでなく、映画でもタッグを組んでいる。毎週やってくるオンエア日という締切のプレッシャーに対して、水田氏は「できる限り早く準備をすることが重要です。シナリオの段階でオダに話して、必要なものを準備してもらいます」と、オダ氏との密な連携と信頼関係を語った。
また、オダ氏は 「オフラインを撮影当日の深夜か翌朝までにあげてもらえるような関係を築くなど、環境づくりも長年取り組んできています。PC などテクノロジーの進化によって、時間のない中、ギリギリまでクオリティを詰められるようになりました」 と TV ドラマにおける制作環境の重要さ、処理速度の向上における恩恵について話した。

 

我々が目指しているものに対してはまだ途中段階

水田氏「我々が目指しているものに対してはまだ途中段階です。『Woman』では、カメラのボディは 3 種類使い分けていますが、決してそれが正解とは思わない。カラコレのシステムも納得いっていないし、画質を損なわないためにもデータのワークフローで仕上げたい。そういった編集環境も含めて改善されればと思っています。ライティングの方法論も変えていきたいですね。
近い将来、家のテレビが 4K といった高解像度になると、これまでの TV ドラマ制作の方法論は通用しなくなります。そこでどうするかも考えなければいけません。
同時に、HDD レコーダーの普及などから視聴スタイルが変化し、視聴率という物差しが瓦解しそうで、そこには期待しています。そういう外的な要因で、TV ドラマの作り方も変わってくるのではないでしょうか」

TV ドラマと映画の両方を手掛ける水田氏とオダ氏が作り出す、従来の TV ドラマを超えた映像美。地デジ化に続いて、TV というハードそのものの進化、視聴率依存のシステムからの脱却、それらを見据えながらも、さらなる高みを目指して走り続ける両氏が、TV ドラマの未来を確実に見つめたドラマ制作をしていることが伺えたセッションでした。

 

インテルの CPU や SSD をはじめ、テクノロジーの進化に支えられ、日々新しい表現を生み出し、追い求めるクリエイターたちの貴重なトークセッションを聞くことができた今回の「DEXS in Inter BEE」。今年の Inter BEE でも大きくフィーチャーされた "4K の時代" が訪れつつある。テクノロジーの発展にインスパイアされ進化してきた映像表現、今後も期待と共に注目したい。

取材:white-screen.jp

 

DEXS in Inter BEE

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