[Photo ® Technology session] 講師:フォトグラファー BOCO 塚本 氏

Windows® PC を活用したフォトグラファーのワークフロー

フォトグラファーや CG デザイナー、Web デザイナーなどに向け、最新のテクノロジーを活かした事例を紹介する 「デザイン エクストリーム セミナー 2012」 が、2012年2月16日にインテルと日本マイクロソフトの主催で開催された。
4つのセッションに分かれ、それぞれの業界のトップクリエイターが登場したこのセミナーをレポートする。

まずはフォトグラファー BOCO 塚本氏による Photo & Technology session、「Windows® PC を活用したフォトグラファーのワークフロー」 だ。

フォトグラファーも安心して Windows® マシンを使える時代

BOCO 塚本氏。
関西を中心に活動するコマーシャルフォトグラファー。

本日、トップバッターとしてお話をさせて頂きますフォトグラファーの塚本です。
今回は Windows® PC を活用したワークフローを紹介したいと思います。
従来、プロのフォトグラファーの間ではアップルの Mac がメジャーでした。では今はどうなのか、これからはどうなのかということを含めて参考にしていただければと思います。

僕の回りにも Mac を使っている人が多いんですけど、「Windows® もいいよ」 と言っても、なかなか乗り換えられない方々が多いです。
ではどういう理由で? と聞くと、1つめに出てくるのが 「Windows® は、操作が難しい」。
なんとなく難しそうであるということですね。

2番目に 「Mac は、グラフィックに強い」 というのが伝説、神話というようになっていますが、本当にこれは神話というか、伝説になりつつあります。
後は 「Mac で十分作業がこなせている」。それはそうでしょう。Mac はそれなりに高い機材になりますから、仕事は十分こなせると思います。

こういった具合に Mac の方がいいという話をよく聞くのですが、これはあくまで Windows® を使ったことがない方がおっしゃっている場合が多いです。元々、僕も Mac を 90年代の初めから使っていました。当時は 「Adobe Photoshop」 が Mac 版しかなかったというのが一番大きな理由かと思います。そういった中で Windows® 2000 が出ました。
この時、私がひょんなことから Windows® のノートを手に入れることがありまして、ものは試しと使ってみたんです。そうすると、これが速いこと速いこと。当時ニコンの D1、D1X というカメラを使っていましたけど、Mac の G4 で作業するより実測で 14倍ぐらい速かったんですね。
その後、Windows® XP、Windows Vista® と続き、現在 Windows® 7 になっています。

今回、セミナーにあたって用意してもらった Windows® マシンがこれですが、最適と言うより最強なスペックです。

会場に用意されたデモンストレーション用の Windows® PC のスペック構成。プロセッサーに第 2 世代インテル® Core™ i7 プロセッサー エクストリーム・エディション、起動ディスクにインテル® SSD (しかも SSD 2台による RAID 0)、データ保存用にハードディスクを搭載している。

今回は 「Build to Oder」、BTO という形で作っていただいているモデルです。もちろん、自分でパーツを購入して自作ということもできます。

僕は Windows® マシンの速さに衝撃を受けて、当時スタジオにあった Mac を半分ぐらい Windows® に入れ替えたのですが、その時メーカー製のパソコンも考えたんですけど、スペックとコストを考えるとバランスが悪い。
さらに、メーカー製のパソコンはフォトグラファーが使わない余計なソフトがいっぱい入っているんですよ。それがいやで、1台目から自作を選びました。
BTO や自作のマシンを使ってもう1つうれしいのが、ポート類が充実して必要なポートはいくらでも増やすことができること。パーツを探すのも難しくないですし。

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Windows® と Mac の混在環境でもモニターの色を合わせる方法

Windows® 2000 の頃は Mac に比べると色の管理、発色の問題もありました。いろいろ苦労しながら使ってきましたが、今の Windows® 7 ではかなり解決してきました。
では、Windows® と Mac が混在する環境で同じ色を再現できるのか、見てみましょう。

今回、モニターはナナオの ColorEdge CG245W を使っています。これはモニターの明るさや色を測って適正な色に合わせるキャリブレーションセンサーが内蔵されているモデルです。これは便利ですね。セルフキャリブレーションに対応しているので、時間が経てば勝手に調整してくれますから。
このモニターに Windows® マシンを接続し、キャリブレーションしてみます。計測にかかるのは2分ぐらいですね。
次にもう1台、Mac OS X 10.6 の Mac にモニターをつなぎ変えて、同じようにキャリブレーションさせて色が合うのかやってみました。

上の写真がこのマシンで、下が Mac です。だいたい近いですよね。これは1台のモニターを2台のパソコンに繋ぎ変えているので、合っているかどうかはカメラで撮影して確認しています。

ColorEdge CG245W でキャリブレーションし、Windows® と Mac にそれぞれ接続して同じ画像ファイルを開いてみたところ。

キャリブレーションでは、「黒レベル」 の設定をきちんと行なっておくと、Mac と Windows® が混在していても色の問題が起こりにくくなる。

キャリブレーションには、実はちょっとコツがあります。目標値の設定では、「輝度」 だけでなく 「黒レベル」、つまりモニターの一番黒くなっているところですね、ここを合わせるということです。
そのままやってしまうと、モニターが表示できる一番黒いところに合わせてくるんですけど、そこに合わせるとばらつきが出ます。黒レベルを合わせると、Mac でキャリブレーションした結果のコントラスト比が 175:1、これに対して Windows® のほうが 174:1。コントラスト比がほとんど変わらなくなりました。
黒レベルをきっちり取った場合は Mac と Windows® の間でも、ほぼ近いコントラストを出ることができるとわかりました。

ちなみに、Windows® 7 の中には色の管理をするをするツールがあります。コントロールパネルの 「色の管理」 ですね。ここもつい触りたくなるんですけど、絶対やめてください。今回のように、専用の機器を使って調整している場合は絶対に触らないでください。

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RAW 現像処理のスピードをアップする鍵となる、CPU 性能と SSD

次に、先程紹介したハイスペックのマシンの速さがどれだけ違うかを見てみましょう。
特に僕らの場合は RAW 現像に時間が取られます。ここでは、10枚のファイルを Photoshop CameraRaw で現像した時間を、冒頭に紹介した Windows® マシンと Mac で計測してみました。
Windows® の CPU が第 2 世代インテル® Core™ i7 プロセッサー エクストリーム・エディションで6コア、Mac Pro の CPU が 2.8GHz のインテル® Xeon® プロセッサーで8コアです。

こういう結果になりました。3回計測して平均を取っています。

10枚の RAW ファイルを現像した場合にかかった時間の比較。
縦軸が秒数で、大きいほど時間がかかったことを示す。

これは見事な結果ですね。カメラの機種を変えて計測してみましたが、同じような結果となり、あまり意味がなかったですね。
ただ、CPU の第 2 世代インテル® Core™ i7 プロセッサー エクストリーム・エディションインテル® Xeon® プロセッサーというのは、(そもそもの設計が異なるので) 単純に比較できないところはあります。
また、この Windows® マシンはハードディスクの代わりにインテル® SSD が入っていて、それも意外と測定に影響を及ぼしたのではということもあります。
それにしても、群を抜いて今回のマシンは速く、それに比べて Mac は遅すぎるだろうということになりました。もうちょっと頑張ってほしいなあ(笑)。

その SSD、「Solid State Drive (ソリッド ステート ドライブ)」 と言いますが、写真を撮る方は CF カードや SD カード使いますよね。あれも中でディスクが回っているわけではなくてメモリーなんですけど、SSD はあれの大きいものだと考えてください。ですからスピードは SSD のほうが速いです。
それからハードディスクは機械式で可動部分が多いのでいつか壊れます。SSD にも寿命がありますが、種類によって1万回書き換えとか10万回書き換えとかできるらしいですね。ただ価格が高いのが今のところネックです。

では SSD とハードディスクは実際どう違うのか、ちょっとご覧下さい。
今こちらの Windows® マシンに2つハードディスクドライブ C と D が搭載されています。こちらの 「ローカルディスク C」 が SSD、「ボリューム D」 が 1TB のハードディスクです。
一番簡単なテストをしてみましょう。SSD の C ドライブとハードディスクの D ドライブに、同じ 3.3GB の RAW データフォルダがあります。それぞれ今ここで複製を作ってみて時間を体感してみましょう。
ハードディスクの D ドライブで複製すると…途中までは速いですが、途中からちょっと待つというかんじですよね。今度は SSD の C ドライブにあるデータを複製してみると…すーっとコピーされました。2倍、3倍というわけではないけれど、スピードを体感できますよね。

現在は起動ディスクに SSD を使って処理スピードをアップし、ハードディスクは大容量のデータディスクとして使うというのが定番になっているようです。デジタルカメラはどんどん高画素化している上、撮影では1日で 5000 ショットぐらい撮ることもあります。そうなってくると撮影データがどんどん増えて、ハードディスクにコピーする以外ないということですね。そう意味でも、高速でかつ大容量ディスクタイプのパソコンがあると便利。というか、ないと困ります。

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テクノロジーを活用してフォトグラファーとしての特色を出す

特に人物の撮影では、納品前に RAW データをいったん JPEG のサムネイルにしてお客さんに渡さなきゃならないということが出てきます。今の 35mm のタイプのデジタルカメラは JPEG と RAW と同時に撮影できるので、私は一時は両方で撮って JPEG を渡せばと思っていました。
ところが、写真は撮って終わりではない。僕はどちらかというと後できっちり調整して、イメージに近づけてフィニッシュ。そうなると、先に撮りっぱなしの JPEG を渡して見てもらい調整後のフィニッシュデータを後から渡すと、色が違うと言われてもめたりするんですね。こりゃまずいなということで、結局 RAW + JPEG での撮影は止めました。

そこで、撮影が終わった段階で撮った画像をすべて現像する。例えば、今ここで10枚の RAW データを現像して TIFF で保存してみましょう。
2400万画素のRAW画像1枚で、現像に1秒ぐらいかかっていますね。これなら5000枚あるとすると5000秒、それでも5000秒かかります。それを考えると速いマシンが必要というのもわかっていただけると思います。

例えばこの作品では、これは色味と古いカメラを使ったような周りのビネットがポイントです。撮影でここまではできませんが、現場でこれを見せないと色の感じとかをヘアメイクさんに確認してもらえないですよね。だって、フィニッシュがこの雰囲気なのだから。

現像時に調整をして独自の雰囲気を表現した作品の例。
撮影だけでこの雰囲気を出すのは難しい。

こういった調整は Photoshop でもできますが、僕は最近は 「Adobe Photoshop Lighroom」 を使っています。
スタジオで撮影する場合はカメラからパソコンに直結して撮影することが多いですが、Lightroom で直結して撮影する方法には2つあります。「テザー撮影」 と 「自動読み込み」 です。ここでは自動読み込みによる直結撮影を見ていきたいと思います。

「ファイル」 メニューから 「自動読み込み」、「自動読み込み設定」 を選んで設定します。フォルダを1つ設定し、この中にカメラからデータが送られてくると現像処理して別のフォルダへ移動するんですね。

ここでは現像の設定のところで、かなりいろいろ調整をしています。
「色温度」 「露出の微調整」 「白とび軽減」 「明瞭度」 を大きく使い、全体的にコントラストを高めたかったので 「トーンカーブ」 で調整しています。色のかぶりは 「明暗別色補正」 です。主にシャドウ側だけの色を変えたかったので、シャドウ側の色相を調整して、ちょっとグリーンを加えています。さらに、「レンズ補正」 を使いました。本来は周辺を明るくして周辺光量落ちを回避する機能ですが、それを逆手にとって周辺を暗くしてビネットの雰囲気を出しています。
そして、この現像設定でプリセットを作成します。

Lightroom で現像の設定を細かく行なう。その上で、この設定をプリセットとして保存しておく。

先ほどの自動読み込みの現像設定のところでこのプリセットを指定しておくと、撮影したデータがフォルダにダウンロードされるだけで自動的にこの現像処理が行なわれるわけです。お客さんから撮影したイメージを全部くれと言われても、1枚1枚調整しなくていい。
もちろんこれも最終的にはちょっとやり過ぎなところは調整したり、Photoshop でレタッチもするんですけど、とりあえずイメージに近づけた状態で見せることはできます。

フォトグラファーなんだから撮るだけが仕事でしょうとはよく言われますが、やっぱりそれだけでは他の方との違いを出すのがむずかしい時代。ですから、なにか違いを出していかなきゃいけない。
例えば、こういうふうに撮影のやり方を変えてみる事で、サムネイルでも少しでもクオリティのよいものを渡せるように試行錯誤しているわけです。

それにはマシンの力も大きいですよね。だからこそプロのフォトグラファーには、今回のような BTO のマシンを使うことをオススメしたいと思います。
本日はありがとうございました。

取材:丸山陽子
会場写真:竹澤宏

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フォトグラファー BOCO 塚本 氏 プロフィール

APA(社)日本広告写真家協会理事。1994 年スタジオビィ設立。
KODAK DCS 写真展出展 (銀座コダックフォトサロン)、2008 年第60 回全国カレンダー展 日本印刷連合会 会長賞・審査員特別賞。2009年第30回 日本 B to B 広告賞カレンダーの部銅賞など。
関西を中心に活動するコマーシャルフォトグラファー。

http://www.studio-bi.com/